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2014年5月21日 (水)

「深海のアトム」感想

 3月末に購入して、なんとGWまでかかってやっと読了しました、服部真澄・著「深海のアトム」。こんなに時間が掛かったのは、480ページのうえに、二段組!! こんなに厚いのにハードカバーじゃないのは、これ以上重くしない方がいいという、出版社の判断だったのでしょうか?(正解!) …もちろん、私が読むのが遅いというのが、一番の理由ですが。
 さて、服部真澄という作家はご存知でしょうか? 以外と知られていないのですが、TVドラマになった作品もある、そこそこ人気がある女性作家なのです。そういう私も、2005年にある切っ掛けがあって出会うまでは全く知らなかったのですが…。できれば、その「きっかけ」についても読んでいただきたいのですが(※上のアンダーライン部を参照)、彼女の視点はいつも、『新しいシステムやテクノロジーは何の為に産まれて、人類を幸せに出来るのか?』 だと私は思っています。そしてその為の、丹念な取材には毎回感心させられます。
 そんな彼女が、東日本大震災に題材をえて、なにを書くのか興味がありながらも、正直ちょっと心配でした。なぜなら、雨後の筍のように震災を取り上げた書籍が出ているなか、直接経験したり関わっている人じゃないと、書く資格は無いと、なんとなく思ってしまっていたから。それでも手にとったのは、服部真澄の現場を深く知ろうとする気持ちを信じたから、かもしれません。

 「深海のアトム」の主な舞台、震災に見舞われる地は、「リアス・エリア」という架空の地域。時代も、現代よりも少しだけ未来らしい。そのため「近未来小説」や、「ファンタジー」という言われ方もしているようですが、そこで描かれている東北沿岸地域の「事情」、特に漁業の衰退と原発誘致の流れなどは、決してファンタジーではないリアルさで迫ってきます。
 マグロが獲れなくなった町と、そこに流れ込んできた原発マネー。荒廃する漁村と、世界有数の豊かな漁場を守ろうとする人々。
 作者が描きたかったのは「震災」ではなくて、地震・津波・被爆と二重三重の災難が襲った地は、ただでさえ複雑な「事情」を抱えていたのだということ、そしてそれは、この東北地方沿岸部に限らず、原発マネーに頼らざるを得なかった地すべてに共通する「事情」で、その根を絶たなければ同様の悲劇が繰り返されるのだと訴えています。

 ちょうど今日、大飯原発の再稼働差し止めの判決がでました。「深海のアトム」でも、当然原発事故が描かれているのですが、ここでの原発は老朽化して停止済みの、廃炉準備に入っている原発でした。これは、原発は停止していても決して安全ではないということと、廃炉の難しさを訴えたかったのではないでしょうか。
 この作品の中で日本は、全ての原発を廃炉することを決定するのだけど、これを指して「ファンタジー」だということの無い未来が待ってますように。願わずにはいられません。

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